茨城大学長 太田 寛行

LUNA4013

自分のアイデアを磨き、実現するために

「14歳で起業」、ある新聞でそんな見出しの記事を目にして私は驚きました。自身が通った学校の法人を買収するに至ったその若き起業家は、自らが経験した教育に対する違和感や物足りなさをそのままにしないために起業が必要だったと語っていました。現在は大学生だという彼女はとても真っ直ぐな人だと感じました。その「起業」の心は、アントレプレナーシップという言葉で表現され、その期待は国の再興にまで及ぶようです。数年前の文部科学省の次世代アントレプレナー育成事業の説明の中では、「受講者が将来の産業構造の変革を起こす意欲を持つようになる」ようなプログラムを支援するとあります。我が国あげて起業の心を育てる制度を整えてきている中、14歳の思いが、「将来の産業構造の変革」につながれば、世の中はもっと面白くなると思っています。  
ところで、アントレプレナーシップに連動する言葉として、「イノベーション」がよく出てきます。「技術革新」と訳されていますが、これは「歴史的誤訳」だと、武藤泰明氏は評しています(『マネジメントの文明史 ピラミッド建設からGAFAまで』(日本経済新聞出版))。原語からすれば、「新・結合」や「組み合わせ」であり、テクノロジーに限定しているわけではないからです。その「新・結合」の類型として、新しい生産方法、新しい販路、原材料・半製品の新しい供給源、新しい組織形態が挙げられています。「新・結合」や新しい「組み合わせ」をもっと身近なことから考えれば、アイデアが生まれやすく、さらに、いろいろな人たちとのコミュニケーションを重ねることによって大きく成長するかもしれません。その仕組みが、本学の「アントレプレナーシップ教育プログラム」だと考えています。  数年前に、シンガポール国立大学を訪ねたとき、アントレプレナーシップを実践する建物を見学しました。講義室から出てきた学生たちが、一斉に、同じ建物内にある様々な企業が参画するブースに散っていく光景を見ました。おそらくアイデアの続きを語り合っていたかもしれません。学生たちはとても生き生きした雰囲気でした。  本学の「アントレプレナーシップ教育プログラム」に参加して、ウィズ/アフター・コロナの時代で働くアイデアを一緒に育て磨きませんか!